68 ページ18
朝食を食べた後に玄関扉から外に出て、白色のひとらんらん様と顔を合わせれば竹箒を渡された
「適度に休むんだよ」
そう言って指差された方に目をやれば、ポツンとたたずむベンチ
その上には折りたたまれたビニール袋と、風で飛ばされないように重しの役割をしている金属製っぽい銀色のちりとり
集めた枯れ葉とかはあれで集めろって事なんだろう
小学校から中学校まで毎日のように掃除をさせられていたから、これくらいちゃっちゃと終わる。
なんて調子こいたのは間違いだったらしい
そりゃそうだ。スプーンの使い方すらよく分かってなかったこの体が上手に箒を扱えるはずが無かったんだ
加えて敷地面積は屋敷との比率にしたら7:3くらいじゃねぇのか、ってくらいに広いからこの掃き掃除が終了を迎えるにはかなりの時間が必要そうだ
「アル〜」
うまく掃けなくて四苦八苦していればのびやかな、この1週間で一番聞き馴染みのある声が少し離れたところで俺の名前を呼んだ
そっちに目をやれば、医者が緩やかに手を振っていて
「行ってきま〜す」
と、言った。
これは、どう返すのが正答なんだ？
行ってらっしゃい、でいいのか？
いや、ちょっと親しすぎるな。
じゃあ、行ってらっしゃいませ？
それはまじの執事じゃんか、恥っず。
え、どうすればいいの。
これ、あれだ。
下校時に近所の顔見知りのお母さんに「おかえり」と言われてどう返事をすればいいのかが分からないあの感覚に超似てる
いや、似てるじゃない。まんま同じだ。
本当にどうすればいいんだ
何も返さないのは失礼すぎる。
だからと言って「行ってきます」に「こんにちわ」で返すのは変すぎるし、なにより医者は近所のお母さんじゃない。
………無難に、会釈か。
行ってらっしゃい、なんていう言葉を返せるほどの勇気は俺には無かったのは当然の事実だ。
深々とお辞儀すれば向こうも、分かってくれんだろう。
それにしても、この感覚はかなり久しぶりな気がする
小学校低学年までは「おかえり」に「ただいま」で返せたのに、
高学年あたりになってくるとめっちゃ小さな声で「こんばんは」って返してたな
それにしても
行ってきます、なんて言葉を聞くのは本当にいつぶりなんだろう
ここに生まれてからさっきまで、そんなのを聞いた事なんて一度も無かったから
すごく懐かしく思える
そんなことを思いながら、少し慣れたように箒を動かして
思わず吐いた息が、まだまだ白いことを知った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねここぶた兼ねっこんこん(プロフ) - うさまるさん» コメントありがとうございます！これからも頑張りますね🥰 (4月26日 18時) (
レス) id: f7a56a3668 (このIDを非表示/違反報告)
うさまる - 面白くて大好きです (4月24日 18時) (レス) @page15 id: 4c17b50875 (このIDを非表示/違反報告)
ねここぶた兼ねっこんこん(プロフ) - その辺の花さん» ありがたいお言葉をいただき感謝感激です😭😭更新は土日がメインになると思いますので、楽しみに待っていただけたら幸いです！貴方様も体調には十分にお気をつけください🥰 (4月17日 11時) (レス) id: f7a56a3668 (このIDを非表示/違反報告)
ねここぶた兼ねっこんこん(プロフ) - MidnigHtさん» 大好きと言って貰えて、とても嬉しいです！更新は最近はかなり遅くなっていますが、気長にお待ちいただけると幸いです🥰これからも頑張ります！ (4月17日 11時) (レス) id: f7a56a3668 (このIDを非表示/違反報告)
その辺の花 - こちらの作品に出会ってから、毎日更新を楽しみにしています！お忙しい中、読者に素敵な作品を届けてくださり本当にありがとうございますm(_ _)m体調やお時間にご無理のないように頑張ってください！陰ながら応援してます💐 (4月16日 22時) (レス) id: 25fc77da9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねっこんこん | 作成日時：2024年4月4日 17時
