65:〃 ページ15
「確かに再び閉じてしまっては意味が無く、結果は変わらないかもしれません……が。たった一度でも、心を開こうとしていた。…その事実が大切なんですよ」
ニコリと念押しに微笑んだオスマンからはまるで後光が差し込んでいるよう。
基本屋敷内では聞くことのないその声色と口調は、彼の外面専用のものであるがために
その姿を直視したチーノとコネシマは、普段とは違う彼の様子に思わず全身にトリハダがたった
「気ぃ悪ぅ……聖人にでもなったつもりなんかぁ？」
「まぁ聖職者やからなぁ」
すんっと元の態度に戻った深緑であったが、先程の彼の様子に悪寒を感じたのはなにも二人だけではなく
グルッペンも苦虫を潰したような表情をしていた
「なんて顔してるんですかグルッペンさん」
「いや………あ、おいエミさん。俺の菓子を勝手に取るな」
「チーノ君も食べてたでしょう」
「なるほど。自分よりも格下の相手が行ったことは己もやって良いと、そう解釈しているんだな？」
「語弊を生むような言い方やめろや」
事実そうだろう。
会話の最後にグルッペンが付け加えたその言葉を、エーミールは聞こえないものとして無視した
カップに残った紅茶を一気に飲み干し「話がそれまくってるので元に戻しますけど」と一言置いてから、色素の薄い彼は話し始める
「結局どうするんや。昼の大泣きうんぬんの前の話は、アルにこの屋敷の小さな雑用を任せるかどうかってことを話して、結論がついていなかったでしょう」
小さな雑用とは本当に大したことではなく、基本的に掃除と、頼まれたことをするくらいだ。
屋敷内では床や階段と手すり、外では庭の掃き掃除
本当にこのくらいで、別にしなくても良いけどやってくれたら嬉しい程度の事しか無い
ただの雇い人であるならば何も悩むことは無いのだが、彼らの気がかりとなっているのはアルの精神状態と信頼関係について
確定で、アルが自分達のことを心から信じているなどは決してあり得ない
そして突然の環境変化に加えて、己の上に立つ存在が増えたのだから、気が気じゃ無いだろう
こんな風に人を信じれなくなった人間を扱うなんてのはいつぶりだろうか。
「……ひとまずはまだ様子を見よう。彼が慣れてきた頃に、この仕事について提案してみるか」
「まぁ、それが賢明ですね〜」
肯定をしながら再度お菓子にチーノは手を伸ばしたのだが、グルッペンがお菓子をその手から遠ざけたことによって掴むことはできなかった
「駄目だゾ」
「ちぇっ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 215人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねここぶた兼ねっこんこん(プロフ) - うさまるさん» コメントありがとうございます！これからも頑張りますね🥰 (4月26日 18時) (
レス) id: f7a56a3668 (このIDを非表示/違反報告)
うさまる - 面白くて大好きです (4月24日 18時) (レス) @page15 id: 4c17b50875 (このIDを非表示/違反報告)
ねここぶた兼ねっこんこん(プロフ) - その辺の花さん» ありがたいお言葉をいただき感謝感激です😭😭更新は土日がメインになると思いますので、楽しみに待っていただけたら幸いです！貴方様も体調には十分にお気をつけください🥰 (4月17日 11時) (レス) id: f7a56a3668 (このIDを非表示/違反報告)
ねここぶた兼ねっこんこん(プロフ) - MidnigHtさん» 大好きと言って貰えて、とても嬉しいです！更新は最近はかなり遅くなっていますが、気長にお待ちいただけると幸いです🥰これからも頑張ります！ (4月17日 11時) (レス) id: f7a56a3668 (このIDを非表示/違反報告)
その辺の花 - こちらの作品に出会ってから、毎日更新を楽しみにしています！お忙しい中、読者に素敵な作品を届けてくださり本当にありがとうございますm(_ _)m体調やお時間にご無理のないように頑張ってください！陰ながら応援してます💐 (4月16日 22時) (レス) id: 25fc77da9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねっこんこん | 作成日時：2024年4月4日 17時
