潜書先は乙女ゲーム (ページ5)

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▽ ページ5

ただ無言で見つめ合うこと数十秒。
耐えきれなくなり、思わず視線を逸らす。

すると、ずっと黙っていた少女が吹き出した。

「ふ…ふふっ…」

「あ、あの…？」

「からかってすみません。本当に楯山さんではないみたいですね」

楯山さん？は相変わらず誰かわからないが、もう敵対心は抱かれていないようだ。

「私は桜木伶です、よろしくお願いします」

「えーっと、村瀬Aです。大正時代と令和時代出身です」

「…へ？」

＿

信じてもらえるかは分からないが、色々と説明をした。
帝國図書館のこと、転生のこと、潜書のこと、ここに至るまでの経緯などを説明し終えると、伶さんは小さくなにかを呟いた。

「つまり…A先生はここに潜書を…」

「伶さん…？」

「呼び捨てでいいですよ。改めて、私は桜木伶。令和時代出身です。A先生とは少し違いますけどね」

そう言って微笑む伶に、少し違和感を覚える。

「なんでウチ、先生付けなん？」

そう尋ねると、若干目を逸らしながら答える伶。

「実は私、A先生の大ファンでして」

「へ？」

「代表作の『ふたり、逃飛行』は、もう50回も読んでいます！」

「50回！？あの小説を！？」

「勿論です！」

「は、はえー…」

うん、急に勢いが凄いな？
にしても、伶はウチのファンやったんか。

「んふふ、嬉しいわぁ」

「う"っ…推しが尊い…」

あれ、なんか怜が顔押えとる。
芥川先生に会った時の太宰と近いものを感じるな((