潜書先は乙女ゲーム (ページ4)

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目覚めた視界に映った光景。
それは、一言で言えば異様だった。

図書館のものではない天井。
暗い部屋に横たわった状態のようだ。

取り敢えず立ち上がらなければ。
重い足を動かし、部屋にあった鏡を覗く。

「…は？」

鏡の中にはいつも通りのウチの姿。
しかし、その年齢はどう見ても14歳ほど。

「あー、あはは…」

目が覚めたら体が小さくなっていた案件である。
ちょっと待て、それなんて名探偵。

そんなことを考えていると、ふと気配を感じた。
禍々しい、微かに洋墨の香りのする化け物の気配を。

「侵蝕者」

そう呟くと同時に飛び出す影。
青色と黒色の奇妙な色をした羊のような化け物。

「はえー、不調の獣か…」

本を手に取り、形状を変化させる。
光が溢れ、手に馴染んだ刀へと姿を変える。

刀を構え、侵蝕者へと向き直った。

「日常を取り戻す糧になってもらうで」

そんな台詞と共に、勢い良く距離を詰める。
部屋への被害が最小限になるように、刀を大きく振り下ろす。

「喰らえ！」

ザンッと音がして、不調の獣は斬り裂かれた。
刀を本へと戻し、状況を把握しようと部屋を見渡す。

明け方で少し暗く、畳の上には布団が敷かれている。
先程はここで横になっている状態だったようだ。

「にしても、侵蝕者がおるってことは、ここは作品の中か」

だとすれば、物語を正しい最後へと導かなければならない。
しかし、そこで問題が発生する。
ウチはこの作品の内容を全く知らないのだ。

取り敢えず、片っ端から侵蝕者を消していこう。
侵蝕者さえ居なければ、物語は正しい方向へと進むはずだから。

「まず、この物語での常識は…」

そう呟いた時だった。
扉が開き、同い歳くらいの少女が姿を現す。

「えーっと…どうも？」

「…え？楯山…さん？」

「楯山？ウチは村瀬Aやけど…」

そう言った途端に空気が凍りつく。
あー、めっちゃ気まずい。誰か助けてくれ。

「村瀬A？まさか、あの『ふたり、逃避行』を執筆した村瀬Aですか？」

「え、あ、はい、その村瀬Aです…」

あれ、ウチって潜書したんよな？
なんでこの子はウチのことを知っとるんや？