✦ ページ19
・
心底、言おうか迷った。
エルモーサが人間の国からの刺客であるのはもはや思い返せば明らかだった。挙動もここ最近おかしかった。この国の為なら彼女を密告するべきだろうが、如何せん恋は盲目、すっかり彼女の手玉に取られていたロボロは、彼女と体を重ね合って自分だけを見てくれたあの甘い日々のことを忘れられなかったのだ。
あまりのショックに鬱になったロボロは更に引きこもるようになり、莫大な罪悪感と彼女に叛かれた精神的ダメージで彼は相当参っていた。だが一度黙認してしまった以上何も言えず、取り敢えず彼女を自室に匿っていたのだ。
だがそう上手くいく訳もなく、勘のいいショッピによる刺客兼調査隊・A＆鬱がロボロの部屋へと投入され、エルモーサは遂に尻尾を出したのだった。
ただひとつ言えることは、ロボロがエルモーサを好いていた感情は、確かに本物だった。
─────
────── ─
─────── ─ ─
後日A達が刑務所に到着した時、エルモーサは疲弊しきっていた。ロボロの 最後にエルモーサに会いたい との訴えが叶って、現場にいるのは監視員を除くとA、鬱、それからロボロの三人だった。エルモーサはAを見た途端に彼女の整った表情は優しく緩んで、酷く甘い声で、それでも決して彼女を欺く気などなさげな姿で言う。
「ああ、引き分けね、私たち。いや、一般メイドに対して手こずった時点で、私の負けかしら」
くしゃくしゃになった金髪に、日本特有の緑色の囚人服。やはり彼女の顔は美しくて、声は柔らかくて、到底人殺しなどする人材には見えなかった。彼女の榛色の大きな瞳がAをみつめる。
彼女にはこれから目も当てられないほどの尋問と、最終的には死罪が待っているというのに、ずっと冷静で、それでいて静かだった。その姿が尚凛々しいまである。
「折角だから、少しだけ情報でも売ろうかしら。ちょっとは尋問軽くなるかな？ ……Aさん、貴方の心臓ひとつだけだけど奪ってしまったわ、ごめんなさい。でも私の命と交換条件よ、嬉しいでしょう？ 私のような美人と釣り合った命なんて。
別に貴方の事は嫌いじゃないの、寧ろ貴方のような強い女の子は好きよ」
「なあ、僕はそんなこと聞きたい訳じゃないんやけど」
鬱は湿気た目をして心底つまらなそうにまゆをひそめた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 437人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にのやも(プロフ) - 梓月さん» 流石悪運なだけありますね(><) シナナイデ……ツヨクイキテホシイデス……😢 (5月2日 23時) (
レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
梓月(プロフ) - ｴｪﾝ また何かに巻き込まれようとしている…泣 ﾄﾞｳｼﾃ…ﾄﾞｳｼﾃ……無事に生きてくれぇ〜 (5月2日 19時) (レス) @page35 id: c21b6e797e (このIDを非表示/違反報告)
にのやも(プロフ) - 元薺(サイ)だった者さん» コメント有難う御座います(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”！ 例の美女は私のタイプの塊なので魅力を感じて貰えて冥利に尽きます！︎︎︎︎ 読者様の好みの作品を作ることができて光栄です、是非最後までお付き合い下さい！⋆* (5月2日 17時) (レス) id: 4e49335954 (このIDを非表示/違反報告)
元薺(サイ)だった者(プロフ) - コメント失礼します！主人公ちゃんの特異な体質や、それにメンバーがどう対応していくのか…そしてあの美人ちゃんの性格全てが魅力的すぎて…こういう作品が大好きでずっと探してたんです…！これからも応援してます！ご無理せず更新頑張って下さい！！ (5月1日 19時) (レス) @page33 id: b4227fd166 (このIDを非表示/違反報告)
*ゆきうさぎ*(プロフ) - にのやもさん» にのやも様のモチベになったら読者としては幸せでございます🌷.* 更新は読み返しながらゆるりとお待ちしておりますので、焦らずにのやも様のペースで❀ (4月20日 20時) (レス) id: aa12f1452f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にのやも | 作成日時：2024年4月5日 19時
