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困った。
非常に困った。
焦りからか心臓がどくどくと大きい音をたてて耳で反響する。さっき潤したはずの喉はいつの間にかカラカラに乾いており、冷房はついていないのにやけに寒く感じる。
ダメだ、落ち着いて私。
目を閉じてゆっくり深呼吸をする。
そしてまた目を開き祈るように鞄の中を覗き込む。
『……やっぱりない』
はぁぁと今度は深く吸った息を思い切り吐いて肩を落とす。
あぁどうしよう、教科書をまるまる忘れてしまった。
昨晩自習した教材をそのまま自室の机の上に置いてしまったのだ。昨日は確かに眠たくて時間割を確認しないまま寝てしまった。
今更後悔してもこの事実が覆ることも無く、時間だけが刻一刻と過ぎていく。
もしこれが優しく穏やかな先生だったら素直に忘れましたと授業の前に言いに行くだろう、しかし運の悪いことに次の授業担当は自分より位の低い貴族の生徒には厳しいと有名なのだ。
そう、中級貴族が集まっているBクラスの人間には下流貴族・庶民が集まっているCクラス、Dクラスとまではいかないけれどそれなりに手厳しい。
気に入らないことがあれば不機嫌を隠すことなく授業に臨む先生である。彼が良い先生を取り繕っているのはAクラスだけだ。
制限時間は休み時間の15分間、学園から寮まではそれなりに距離があり往復でも20分はかかってしまうため取りに行くことは出来ない。
なら友人に借りに行くのはどうだろうか。
3年生のクラスは合計4クラスあり、授業内容もほとんど変わらないため持っている教材は全員一緒だ。
Cクラス、Dクラスにいる数少ない友人に借りに行くならそこまで時間もかからない。
『でも今日に限ってCクラスとDクラスは移動教室だったような気がする……』
つまり今教室にいないということになる。勝手に友人の席へ手を伸ばして借りるなんて実質窃盗と同じである。
そう、なら私に残された手段はひとつしかない。
『……Aクラスの人間に借りに行く』
思わず自分の頭を手で覆う。
Aクラス、上流貴族しかいない特別なクラス。
圧倒的なオーラがあるため私はあまりAクラスの前を通らないが生徒会に入っている人間の半分以上がこのクラスに在籍しているため昼休みに女生徒がコソコソと覗き込んでいるとか。
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もとろん(プロフ) - 杏さん» コメントありがとうございます。書き手が欲しい言葉を1から100まで揃えてありがとうございます。待ってくださる方がいるだけで励みになります！これからものんびりと創作活動に付き合っていただけますと幸いです。 (1月16日 0時) (
レス) id: d035e17497 (このIDを非表示/違反報告)
もとろん(プロフ) - ロリコン女さん» 最高と言っていただけて感謝感激です。のんびりではありますが更新していきますので気軽にお待ちいただけると嬉しいです！ (1月16日 0時) (レス) @page28 id: d035e17497 (このIDを非表示/違反報告)
杏(プロフ) - 初コメ失礼します。つい最近この作品に辿り着いた者なんですが、文章が綺麗で凄く読みやすく、面白くてあっという間に最新話まで読み切ってしまいました。お話が更新される度歓喜で舞い上がっています！ 作者様のペースで更新頑張って下さい。応援しています。 (1月8日 17時) (レス) id: efc02aac0e (このIDを非表示/違反報告)
ロリコン女 - 最高です。もう、好きです。逆ハー大好きなので逆ハーと見た瞬間とっても嬉しかったです。更新頑張ってください！！！ (1月8日 8時) (レス) id: 6f972d6ac3 (このIDを非表示/違反報告)
もとろん(プロフ) - の〜さん（旧もこ）さん» 私も大好物なのでとても気持ちがよく分かります。作品の展開的に登場させるのは遅くなってしまいますが全員かくつもりなので気長に待っていただけると幸いです (1月7日 23時) (レス) id: d035e17497 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もとろん | 作成日時：2023年9月28日 15時
