【d!】心まで、透明化してよ (ページ1)

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1話・前提ページ1

あの日、私の心は決めた。

無能になることにした

だから彼らに嫌われるように仕向けた

彼らを、守りたかったから

彼らから、私を遠ざけたかったから

でも、

歯車は違う方向に回り始めちゃったみたい

───
トントンの部屋

コンコン

スチールの固い扉の衝撃音が3回
そしてくぐもった女の解錠を
求める声

扉を開けた先には、
薄汚れた服と傷だらけの体
そして痩せぼった顔の

「トントン、様。書類を提出しにきました」
tn「…はいれ」

tn「…」

Aという人物は、幹部の中では
珍しい女の体をもつ人間。割には
お洒落や教養には興味を持たず、
いつも手には書類の束

喫煙者、お酒は強め
そして

tn「《無能》。はよしろや」
「…すみません」

tn「…」

俺らの不要物。俺らの味方じゃない
Aは《あの日》から変わった
俺らの味方じゃなくなった。

無能は、
《いつも書類を束ねるのに時間をかける》
ノロマ

こんな無能と一緒にいたくないんやけど
無能から無理やり書類を奪って
次に渡す量を無理やり持たせる

「あ、…」

tn「でていけ」
「…すみません」

tn「はぁ、ほんま疲れた」

あの無能なんかでていけ
俺らの視界にはいんな

愚痴愚痴と灰色の煙が充満する
どれだけ換気してもあの女のせいで
部屋が湿っぽくなるんや

…

tn「はぁ、ちるのほうがまだええわ」

───
廊下

「…」

「いっｯ……」

zm「…」

「…」

腹部から火傷のような熱い痛みが
どくとくと溢れだした。思わず
しゃがれ込んでしまう。汗ばんだ
顔で上げれば無表情のゾム様

zm「無能が視界に入んな」
「…すみません」
zm「…お前なんて、いらん」
「…」

zm「でていけ」

「いｯ」

傷口にお湯は少し酷いんじゃないのか
けど文句も言えない口では謝ることしか
できずただ彼が立ち去るのを見つめる

zm「…」

Aなんて、無能や
あいつは無能。俺らの敵
俺らの味方やない

「…」

無能に「なって」よかった

───
A

無能
中堅幹部
自￤傷あり

でも彼らのことは嫌いじゃない

───
ちる

新人幹部
Aが嫌い
顔はいい

Aを殺すために日々動いている